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2018/04/17

なでしこジャパンが見せた「弱者の兵法」。戦い方のシフトチェンジでW杯出場権を獲得

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アジアの頂点への挑戦は終わっていない。だが世界への切符はしっかりと掴んだ。

オーストラリアに1-1で引き分け、なでしこジャパンは1勝2分けでグループB2位の座を確保した。アジアカップ準決勝に進み、5位までに与えられる2019年フランス・ワールドカップの出場権を獲得している。

■決戦で変貌

オーストラリア戦のなでしこは、戦い方をガラリと変えてきた。

いつものポゼッションは鳴りを潜め、時にパスを繋ぐことを放棄してでも、早めに前線へとボールを送る。ミスパスになっても、そこから守備を始める。そういう、良い意味での「割り切り」ができていた。自ずとオーストラリアが攻撃をスタートさせる位置は低くなる。自陣のビルドアップから攻めなければいけなくなったオーストラリアは、攻撃のゾーンに入り要所でミスを連発した。

格上のオーストラリア相手に、なでしこが採ったのは「弱者の兵法」だった。これが見事に嵌った。オーストラリアの攻撃は明らかに精彩を欠き、スタジック監督はベンチで苦渋の表情を浮かべていた。おそらく、なでしこ対策として、高い位置からのボール奪取とカウンターを用意していたはず。つまり、予想が外れ、面を喰らったのである。

対して、なでしこは強かだった。業を煮やして自滅するオーストラリアを余所に、後半に入ると、巧みにスペースを突いて効果的な速攻を仕掛ける。また、守備面では、宇津木瑠美の存在が大きかった。宇津木は早い段階で攻撃の芽を摘み、果敢にセカンドボールを拾った。玄人好みのプレーで、オーストラリアの攻撃のリズムを狂わせた。

横の揺さぶりではなく、縦の揺さぶりがボディーブローのように効いていた。先制点は清水梨紗が蹴ったロングボールから生まれた。これに長谷川唯が競り勝ち、岩渕真奈が拾い、二次攻撃でゴール前を崩して阪口夢穂がゴールを決めた。

細かく言えば、長谷川は競り勝ったというより、中盤でほとんどフリーになっていた。157センチと決して大柄ではない長谷川があそこでヘディングで後方にボールを送れたのは、オーストラリアの中盤が間延びしていた証だ。

なお、この試合で日本のインターセプト数(17回)はオーストラリアのインターセプト数(4回)を大きく上回っている。デュエル勝率は48,4%。これは選手間の距離感がなせる業だった。

■変化の実は

先のアルガルベカップでオランダ(FIFAランク7位)に2-6と大敗したチームが、オーストラリア(同6位)相手に勝利まであと1歩に迫ったのだ。

韓国戦のなでしこはお世辞にも良いプレーを見せていたとは言えなかった。問題は、そういう中で主体的な変化が起こせるか。その観点からすると、韓国戦からオーストラリア戦でのドラスティックな変化は肯定的に捉えられる。

ただ、ひとつ気になったのは、それが高倉麻子監督の指示だったのか、選手たちの判断だったのかという点だ。選手主導だった場合、別の問題が生じる。つまり、変化は一時的なもの。オーストラリア戦はW杯出場権が懸かっていたために、「たまたま」あのような試合を演じたということになる。

試合終了間際。熊谷紗希が相手選手とぶつかり、ピッチに倒れ込んだ。「サキ、倒れてて!」という声が飛ぶ。その間、選手間では「ボール、奪いにいけるようなら、奪いにいっちゃおう」など、積極的にコミュニケーションが行われていた。それから、同点に追い付かれたあとの、ボール回し。オーストラリアも無気力だった。守備に行く気はゼロ。ただ、もっと「うまくやる」方法はなかったのか。サッカーではコーナーフラッグ付近でのボールキープが時間稼ぎの定石だ。

意思疎通が図れているか否かは、大きな試合になればなるほど重要度を増す。そこは監督、選手、今後突き詰めていく必要があるだろう。また、オーストラリアは何もできなかった試合において、サム・カーのゴールで勝ち点1を拾った。翻って、なでしこの決定力の課題は依然としてある。

疑問は残る。しかし、なでしこは、準決勝進出とW杯出場権獲得というノルマを達成した。そして、オーストラリア戦の試合内容は非常に良かった。奇しくも、それは、男子の日本代表がヴァイッド・ハリルホジッチの下で培ってきたサッカーだった。なでしこが「弱者の兵法」でW杯出場権を獲得したのは、先にハリルホジッチを解任した日本サッカー協会、日本サッカーへの強烈なアンチテーゼだったような気がするのである。


森田泰史
スペイン在住のフリーライター
1986年、東京生まれ。2007年に21歳で単身渡西。バルセロナを拠点に、現地のフットボールを堪能。カンプ・ノウでメッシの5人抜きを目の当たりにして衝撃を受ける。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。過去・現在の投稿媒体は『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』など。
https://news.yahoo.co.jp/byline/moritayasushi/20180417-00083991/
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